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​『6steps』上演にむけて

見守り人 宮下寛司さんからの質問をうけて

​チーム・チープロ

​公開日:2023年12月3日

木村玲奈さんへ

 

玲奈さん、こんばんは。

来週とうとう6stepsの上演ですね!

 

突然のお手紙を送りつける形で驚かせてしまったらすみません。このあいだSTスポットで宮下さんからの質問をもとに玲奈さんとお話ししたことをふまえて、玲奈さんと、これから上演をみるみなさんにむけて、書いてみることにしました。

 

玲奈さん、6stepsの演出はむずかしいです。

6stepsはSTスポットの白い空間にものすごい存在感で在ってしまうからです。それは、ただモノとしての迫力だけにとどまらず、明示せずともさまざまな文脈への想像を促す、そういう在りかたです。

 

わたしたちチーム・チープロは、これまでの活動で、劇場に身体をおき、そこにことばやものをつかってさまざまな文脈やイメージの想像を有機的に重ねていきながら、舞台上で「踊る」ことと、観客が「踊りをみる」ことをとりむすんできました。これがわたしたちの「演出」方法だといえるかもしれません。わたしたちはそうすることで「踊る」ことが、劇場のなかの「踊り」のイメージから、なにやら自由になれる、軽くなれる感覚があるとおもっています。

 

けれど今回は、文脈やイメージを重ねていこうとするとなんだかとても野暮ったくなるのです。重ねたものが、身体について、その身体がおかれた場所や時間について、そして階段について、想像させてくれるのではなくて、その説明みたいになってしまうのです。

まるで、6stepsと喧嘩しているみたい。そしてたいていのばあい6stepsが圧勝してしまうのです。6stepsはすでにさまざまな想像を呼びこんでいます。

 

6stepsをSTスポットにおいた、その瞬間からその空間にあらわれる、「演出」力はものすごいと思います。

 

6stepsはまた、身体にけっこう負荷をかけます。蹴上の高さが街中の階段よりも高いからだと考えています。6stepsをつかっていろんな動きのパターンを試すことはできるのですが、1時間の上演時間で反復することができる動きは限られてくるのではないかとも思ったりします。

上演にむけて、階段でできる動きを80個くらいつくってみましたが、途中でひざがいたくなってきたので、最終的には身体の体調にあわせて絞っていく作業を行っています。

無茶なことをせずに、丁寧に着実に自分の身体ができるぎりぎりのことをさがす。6stepsと向き合うとはそういう時間でもあります。

それが玲奈さんがつくった振付の指示書に書かれている「踊りを探す」ということなのかなあとか考えながら。このような時間をすごしているときもまた、6stepsの「演出」力は働いています。恐るべし。

 

これまで玲奈さんがおこなってきた「6stepsを置いてみる」企画のときや、自宅に迎えた6stepsのうえでは、寝っ転がってうえにあがったりとか、あんなに無茶苦茶なことをして軽やかに楽しむことができたのに、上演の時間をつくるために6stepsに向き合うと、観る人にとってものぼる人にとってもなんだかとてもとても重くなってしまうのはなんでなんだろうか。

そう、6stepsの「演出」力は、上演という形態を採用したとたん、観客にも負荷をかけてくるのです!

 

この6stepsそのものがもつ「演出」力と戦いながら、踊ることと踊りをみることをどうすればとりむすぶことができるのかを考え、準備をしています。この準備がわたしたち、チーム・チープロ の「演出」なのかもしれません。ファイター精神でがんばります。軽やかさを!!

 

チーム・チープロ

松本奈々子、西本健吾


(チーム・チープロは、今回の企画の企画者であり6stepsのコンセプト・振付を担当されている、木村玲奈さんにご依頼いただき、STスポットという劇場でおこなう1時間の上演の演出を担当しています。)

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